Q、生前贈与について詳しく知りたい!

生前贈与は単に財産を渡せばよいというものではございません。生前贈与をされた分につきましては相続税の対象から外れる一方、贈与税の対象となってしまいます。さらに、贈与の制度を理解しなければ必要以上に税金が増える事や贈与が無効になってしまう事もございます。


・生前贈与という贈与はない!?

相続と共に財産を受け継がせるための選択肢となる生前贈与ですが「生前贈与」という言葉は法律にはございません。贈与とは人から人に財産を与える契約ですのでお互いが生きていなければ成立する事はありません。したがって、一般的に使われている生前贈与という言葉は「相続を視野に入れたうえで選択する贈与」という理解となります。贈与では贈与する人の事を「贈与者」、贈与を受けられる人の事を「受贈者」と言います。そして「贈与は契約」ということを忘れないでください。両親や祖父母が一方的に子や孫に財産を贈与したいと思っても「受贈者」側の了承がなければ無効となってしまいます。(契約書などが必要)贈与をされた場合には相続税に代わって贈与税が課税されます。課税される額も計算方法が異なりますのでどちらも知っておいて損はないと思います。


・死後の贈与=遺贈

生前贈与ではない贈与とは何か?それは「遺贈」です。遺贈とは遺言書を作成して財産を与える人を指定できるものです。遺贈につきましては相続の1類型として扱われます。


・亡くなる3年前から行われた贈与は相続税で処理される

贈与は亡くなる3年以上前に行わなければなりません。、万が一ですが生前贈与をした人が亡くなられてしまった場合、亡くなるまでの3年間に生前贈与された財産は相続税の課税対象に含まれます。ただし、贈与契約自体は有効となります。


Q、生前贈与にはどんなメリットがあるの?

生前贈与を行なう大きな理由としましては節税対策がございます。この先で詳しくご説明をさせて頂きますが贈与税は1年間で110万円を超えた財産が課税対象となります。つまり毎年110万円に満たない範囲内で財産を贈与していけば贈与税、相続税を共に減らせます。(2018年12月現在)


・生前贈与の方法と贈与税の計算

生前贈与の方法は贈与者と受贈者で合意をするだけとなります。具体的な贈与契約は贈与する物と贈与する相手(受贈者)及び贈与を行なう日時を決めます。贈与自体は書面が無くても可能となりますが、後々の事を考えた場合、契約書を作っておくほうがいいと思いますより契約書の安全性を求める場合は公証人役場で確定日付の押印を頂き、公正証書とされる事を薦めさせて頂きます。

 
契約書が無効にならないように注意してください!

贈与契約は口約束でも有効に成立しますが、書面を適当に書いてはいけません。名前は自筆で署名し、印鑑は実印を使用します。日付も『吉日』ではなく明確に記入してください。契約書に不備がある場合は贈与の立証が困難となってしまいます。不動産を贈与する際は贈与契約だけではなく登記の変更も忘れずに行なってください。


・暦年課税(一般的な贈与税)の税額計算

暦年課税は「1月1日から12月31日まで」を一区切りとして贈与税を計算するものです。年度での区切りと異なります。ご注意ください。暦年課税における贈与税の計算方法は以下のようになります。

(1年間に受けた贈与額の合計-基礎控除110万円)×税率-控除額=贈与税額

よく聞く「贈与額を110万円以内に収める」とはこの基礎控除の範囲内でという意味になります。

贈与税の税率は現在このようになっております。


・20歳以上の者が直系尊属から贈与を受ける場合

基礎控除後の課税価格

~200万円以下                税率 10%  控除額   0

200万円超~400万円以下        税率 15%  控除額  10万円

400万円超~600万円以下        税率 20%  控除額  30万円

600万円超~1,000万円以下      税率 30%  控除額  90万円

1,000万円超~1,500万円以下    税率 40%  控除額 190万円

1,500万円超~3,000万円以下    税率 45%  控除額 265万円

3,000万円超~4,500万円以下    税率 50%  控除額 415万円

4,500万円超~               税率 55%  控除額 640万円


・その他の場合

基礎控除後の課税価格

~200万円以下                  税率 10%      控除額   0

200万円超~300万円以下        税率 15%      控除額  10万円

300万円超~400万円以下        税率 20%      控除額  25万円

400万円超~600万円以下        税率 30%      控除額  65万円

600万円超~1,000万円以下      税率 40%      控除額 125万円



生前贈与の注意点

生前贈与には幾つかの注意点がございます。このポイントを見逃してしまいますと損をしてしまう場合や申告漏れ等に繋がる事、または贈与自体が無効になってしまう場合がございます。

 ・受贈者が合意し、且つ自由に財産が使える状態でなければならない

何度も繰り返してしまいますが贈与は契約です。契約である以上お互いの合意が必要となります。そのため「相手が知らなかった」状態の財産は贈与契約が無効となってしまいます。例えば、ご自身以外の誰かの名義で口座に隠し財産を貯蓄されても、その相手が知らなければ贈与契約は成立していません。また実質的に財産を引き渡していない場合も贈与契約が成立していません。金銭を与える契約をしていても通帳を贈与者が持ち続けた場合が該当します。

 ・毎月同じお金を贈与していると「連年贈与」になるかも

贈与される金額が110万円以内だからと毎年110万円を贈与していますと「元々は1度に渡せた金銭を節税目的に分割しているだけ」と考えられてしまいます。この事を連年贈与といいます。連年贈与と指摘されないために毎年の贈与額を変える等の工夫が必要となります。

 ・相続開始前3年間の贈与は相続税で処理される

相続開始前3年間の贈与は相続税の課税価格に含まれます。つまり、相続税の計算において相続財産として上乗せされるため、既に支払った贈与税は相続税と相殺される事になります。


・相続時精算課税制度の活用

暦年課税は110万円まで控除されますが、これでは不動産のような大きな財産を贈与する際にはあまり効果を発揮しません。そこで大きな財産を課税した際にも税金を控除できるように相続時精算課税という制度を活用できます。この制度は60歳以上の両親及び祖父母から20歳以上の子供や孫に贈与をした場合に以下の効果が適用されます。

  • 2,500万円までを課税金額から控除できる。

  • 相続時精算課税制度を用いた場合、その財産の贈与税は相続時に支払うものとされる。

  • 相続時精算課税制度を用いた場合、その財産は相続財産としても計算される。

  • 相続時精算課税制度を用いた結果、計算された相続税は、この制度によって課せられた贈与税と相殺される(相続時精算課税制度による贈与税>相続税の場合は贈与税が還付されます)

一見しますと2,500万円まで贈与税が控除される素晴らしい制度に思えますが相続時精算課税制度を利用して贈与した財産は全て相続財産として持ち戻しされてしまいます。この制度を利用して却って損をする場合さえございます。また相続時精算課税制度を一度利用するとその後は暦年課税に戻せなくなってしまいます。慎重に手続きを行なう事をお勧めします。

 
・相続時精算課税制度で得をする場合と損をする場合

相続時課税精算制度は相続税と贈与税両方の対象となり、且つ相続税とこの制度によって支払われる贈与税を相続時に精算できる特徴がございます。適用される場合には次のような判断基準が必要で具体的な計算は弁護士や税理士に頼ることが望ましいです。

  • 相続時と贈与時で財産の価値が変わらない場合は意味がありません。

  • 相続時の財産価値が贈与時より上がる場合には損となりやすい。

  • 相続時の財産価値が贈与時より下がる場合には得となりやすい。

以上を見ると相続時精算課税制度は相続の前に贈与税を課税させずに大金を渡したい時や不動産を渡したい時に使われております。この場合、不動産の場合であっても価値が下がる前提で贈与を行なう事がメリットとなります。


収益物件の場合は状況によって選択肢が変わる!?

収益物件は贈与すれば、そこから発生する収益を受贈者が独占できます。税金での損益よりも物件からの収益が上回るなら結果的に得をする事になります。


生前贈与を非課税・贈与税を抑えて行なう方法

 


基礎控除


暦年贈与における110万円の控除の事になります。
1年間に110万円を超えた部分のみが課税金額として計算されます。

 
配偶者控除

配偶者控除は2,000万円までが非課税となります。贈与するものは不動産(家や土地)に居住を続ける事や婚姻期間が20年を越えている事等の幾つかの条件がございます。生涯に一度のみ使う事が可能となります。

 
教育資金に関わる特例

30歳未満の子供や孫に教育資金として贈与する場合は1,500万円までが非課税となります。教育資金とは学校に支払うべきお金の事で塾や習い事の場合は対象外となります。

 
結婚や子育て資金の贈与に関わる特例

20歳から49歳までの子供や孫に結婚や子育ての資金として贈与した場合、結婚のみの場合であれば、300万円。結婚及び子育て資金なら1,000万円まで非課税となります。平成31年度税制の改正により、平成31年4月以降に行なわれる結婚や子育て資金の一括贈与に関しましては受贈者の前年の合計所得金額が1,000万円を超える場合は適用対象外となっております。(令和3年3月31日まで)

 
住宅取得資金贈与の特例

住宅資金を子供や孫に贈与される場合は最大3,000万円までの贈与が非課税となります。こちらも幾つかの条件がございます。



贈与と相続の使い分け

まず考えられるのが贈与と相続の使い分けです。贈与税においては1人に対し毎年110万円或るいは贈与者が死亡するまでに2,500万円が。相続税においては遺産全てに対して3,000万円+法定相続人の数×600万円が基礎控除の対象となります。

それぞれの税額表を見て、どの財産をどの税金の対象とするのかを考える事で節税の意味が大きく変わってくると思います。言うまでもなく贈与は毎年少しずつ行なった方が節税対策になります。